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こころの健康に参考になる本の紹介 カウマンの本棚㉙

     「あの若手はどうして辞めないのか」

                           

                            古屋 星斗 著

                   朝日新書(26.7.30発行 本体900円)

 

                        著者は経済産業省勤務後、リクルートで労働市場を研究されている

                       方です。

                        若者の早期転職が当たり前になってきている現代、定着率向上が管

                       理職の重要職責になっているわけですが、辞める人に理由を聴くこと

                       は当然として、辞めない人に「辞めない理由をきくこと」の重要性を

                       説いています。「離職は天災、定着はプロセス」という、著者の見解

                       はなるほどと思います。

 

 

 

 

 

 

 気づきがあったところ

〇 一つ大きな変化が起こった。それは「転職市場の成立」である。現代日本は、転職が「やむにやまれぬ選択肢」ではなく「合理的な選択肢」になりつつあるのだ。(p59)

〇 すでに53%と全体の過半数の企業が副業・兼業を認めており、認めていない会社の方が、少数派の状況へ、この10年で変化した。(p65)

〇 「キャリアチェンジ」は人生に数回しかない特別なイベントから、日常のアップデートとなった。(p66)

〇 変化する環境の中で自身に様々なものを身につけて、選択できる余地を持ち続けることこそが、現代の職業人生における「サバイブ感」の本質なのだろう。(p69)

〇 選択肢が多いことは、自由や可能性の拡大を意味する一方で、その分だけ「選択の負荷」を抱えることにもなる。心理学の分野では、選択肢が多すぎることで、逆に満足感が下がる「選択のパラドックス」も指摘されている。自分にとって、最善の選択を探し続けるほど、他の選択肢を選ばなかったことへの後悔や不安が大きくなり、結果として幸福感が損なわれてしまうこともある。(p71)

〇 社員が会社に残ることを選択する理由には、単なる生活のためだけではなく、職場環境や人間関係、成長の機会、企業理念への共感、同僚への期待など、まさにその会社の特徴や強さを構成する多様な要素が含まれている。(p89)

〇 働いている組織に対して、不平不満が全くない人間など存在しない。みな何かしらの不平不満があるのだから、聞かれればどんどん出てくる。しかし、組織への不平不満がたくさんあるからといって、それは組織を悪く思っているかどうかとは別の問題なのだ。(p92)

〇 p110からは、「辞めない理由」を12項目に分けて、分類しその応用について詳しく述べており圧巻なのですが、長くなるので省略します。興味のある方は本書を読んでください。

〇 定着とは「辞めない理由」が蓄積し、言語化していくプロセスであり、離職とは「やめない理由」が蓄積しない結果として発生する現象である。(p149)

〇 マネージャーの方々に困り事を尋ねると「若手の本音が聞けない」という悩みがよく返ってくるが、そのこと自体は、それほど重要ではないと考える。「本音」を聞き出す必要がないのは、以下二つの理由による。

 第一に辞めない理由は「すでに明確に存在していて聞き出されるもの」というより、言語化されるなかで、本人の中に形作られている側面を持つ」といえる。つまり、言っているうちに本音に育っていくのだ。

 第二に、企業や人事、上司などの育てる側にとって重要なのは、本人の心の奥底にある本音を暴き出すことではなく、その人が「なぜここで働き続けるのか」を自分の言葉で語れる状態をつくることだからだ。(p206)

〇 社外でも通用する優秀な人材ほど外部労働市場で他社からの引きが強く、高待遇で転職することが可能になる。企業としては「育てれば育てるほど辞めてしまう」という、育成と定着のトレードオフの関係が顕在化し、育成の投資対効果の低下が認識されるようになった。結果、日本企業が若手を育てなくなってきている。もしくは、育てられなくなってきている。(p220)

〇 育てる側が一番忙しい、育てる人を育てられないといった嘆きの声を聞くことも多い。また、外部労働市場が成立したために育った若手ほど辞めやすく「どうせ辞めてしまうから、育てるより中途採用に力を注ごう」という企業の本音が、統計に現れている。(p222)

〇 すれ違いの抜本的な解決策=「3年後に辞める」前提で話す。(p234)

〇 辞めることを前提にして、仕事やキャリアの話をすることで、若手は「この会社から自分は何を得たいのか」と向き合わざるを得なくなる。自分がどのようなスキルを身につけたいのか、どんな経験を得たいのか、はたまた報酬をどんな形で得たいのか、より明確に言語化せざるを得なくなる。これは、組織と個人双方にとって大きな利点となる。(p228)

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