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こころの健康に参考になる本の紹介 カウマンの本棚⑱
「人生の大問題と正しく向き合うための認知心理学」
今井むつみ 著
日経プレミアシリーズ(25.5.23発行 本体900円)
著者は認知科学、言語心理学、発達心理学の専門家で、主な著
書に「「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?」「言語
の本質」などがある方です。
「私たちの物の見方には、常にある種の「偏り」があるという
こと。そして、その「偏り方」は人によって違うということ。さ
らにいえば、自分自身に「偏り」があるということに気付けない
場合も多いということ。こうした人間の認知の性質を知ること
が、仕事において、あるいは日常生活において、他者を尊重しな
がらよりよく生きて行くことにつながると考えています」
なぜ、私たちは客観的に世界を見ることができないのか。4つの
原因を挙げています。 ①人間の「記憶 」はあまりにも脆弱である
こと ②人間は基本的に「論理的な思考」が苦手であること
③人間は「確率」より「感情」で思考するから ④人間は「思考
バイアス」に流されるから。
ここでの思考バイアスとは、考えるときの「偏り」や「偏見」
のことで、だれもが強弱あれどみんなにあるものです。そして、
これは人間が進化の過程で獲得してきた特性なのだそうです。具
体例が9種類も紹介されています。
ここからは、気になった箇所の紹介です。
人間の思考は、AIや動物に劣るのでしょうか。人間は「スキーマ」を使って高度な思考ができるとのことが特徴。スキーマとは、経験を自分で一般化・抽象化して作った、暗黙の知識のことです。言い換えれば、人が無意識に持つ知識であり、知識の枠組みでもあります。私たちは多くの場面で、論理的思考よりもスキーマーを使って判断をしていますが、一方で「自分がスキーマを使っていること」に気がついていません。そこが落とし穴です。私たちはスキーマを使っているということに気づかずに、スキーマのフィルターを通して情報を選択し、行間をうめて理解し、記憶しています(p113)
そして、人間は様々な限界や制約が、人間を独自の思考スタイルに導いた。ですから、この思考スタイルは動物、そしてAIとも異なります。 それが、スキーマに頼った「アブダクション推論」です。
アブダクション推論とは、特徴としては、正解が一義的に決まらない、論理の跳躍を伴う推論であるといえます。ある種の非論理的な推論です。
例えば、皆さんの中には、電車の中で気分が悪くなるなどして、遅刻をしたことがある方がいるのではないでしょうか。その時、たった1回の遅刻のために「だらしないやつだ」という烙印を押されてしまったことがあるかもしれません。これもアブダクション推理の1種であり、これには「過剰一般化」と名前がついています。
(他にも例がいくつか挙げられています)(p119)
人間とAI、動物は、推論の仕方が違う。人間が自然に行っているアブダクション推理こそ、人類の進歩を生み出してきた(p155)
多くの人は「自分は合理的に判断し、決定している」と思っているが、実は選択や意思決定は、多くの場合で最初に感情で、端的に言えば「好きか嫌いか」で判断し、その後「論理的な理由」を後付けしているに過ぎないことがわかっている。この「どのように行動するべきかの価値観」であり「物事を単純化するためのツール」を「神聖な価値観」とよんでいる。「神聖な価値観」に従った判断は素早く、ブレがないが、一方で、そもそもの判断は感情にあるため、判断の根拠に論理性がなく、自分と異なる意見を受け入れるのは難しい(p163)
効率性や単純な思考ばかりを強化し続ければ、私たちは「人間としての強み」を失い、AIに代替されるものになってしまいかねません。そうした状況になりそうだと感じたら、自分は何が好きなのかを考えること。そして。「得意に帆を揚げる」ということばを思い出すことです(p210)
私たちは、偏った(個々人違った)自己認知により、判断したり、言葉を理解したり、思考したりしている。だから、他人と合わないことがあっても当然と思う必要があるということですね。偏りがひどくなると精神疾患に繋がります。そんな場合は「認知行動療法」という対策もあります。