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                    「メンタル脳」 アンデシュ・ハンセン著

                         久山葉子訳 新潮新書(24.1.20発行 本体1000円)

 

                  まず、私たちが今生きているということは、何百世代もの先祖が、生き延

                 びて、子どもを持つまで生きてきた結果だといいます。そのためには、生き

                 延びるために「正しい選択」をしてきたともいえるし、ほんの少し有利な遺

                 伝子も持っていたはずです。その祖先は、サバンナで「危険を回避する」か

                 「チャレンジするか」の決断を繰り返していたはずで、このため、脳は命を

                 守ることを最優先する進化をしてきた。そして、感情を命を守るための「道

                 具」として使ってきたと指摘している。

                  脳は私たちをコントロールするために「感情」を使う。怖かったり、勇気

                 が出たりするのは、脳が私たちを生き延びさせるためにしているこである。

                  例えば、「不安」は防護のメカニズムで、ストレスにより「闘争か逃走か」のモードに入る体のプロセスを起動させる。これも脳が私たちを生き延びさせるための仕組みなのだ。それが理解できれば不安を過度に恐れずに済むはず。

 脳は私たちの「記憶」も道具として使う。つらい思い出がよみがえるのは、脳が同じような危険から私たちを守ろうとするからであり、記憶は取り出す度に変化するので、安心できる状況でつらい思い出を口にすることにより、辛さを減らすことができる。嫌な記憶も「フタをする」のではなく、何度も取り出すことで変化させることができる。

 引きこもりも恐怖症も、脳が感染などから私たちを守ろうとして引き起こされることがある。ただし、少々やり過ぎなこともある。脳は、危険に強く反応するようにできている。現代は世界中の危険に関するニュースが、常時スマホに入ってくるから要注意。ネガティブな感情を一人で乗り越えるのが困難なときは、まず信頼できる人に話を聞いてもらおう。助けを求められるのは勇気がある証拠である。

 脳も体の一部であるから、身体が強くなれば、その情報が脳に伝わり、メンタルも強くなる。運動でうつのリスクは下がる。ストレスや不安を減らし、パニック発作や恐怖症、PTSDにも効果がある。成績が上がり、自信がつくことも期待できる。運動しない理由はない。

 私たちの祖先は群れで生きてきたので、他者と連帯できれば幸せを感じるし、孤独になればストレスになる。孤独はメンタルや身体の病気の確率を上げ、寿命も縮める。他人をネガティブに捉えるようになることもある。ただし、孤独は本人が感じるかどうか次第である。

 キラキラしたSNSはメンタルを下げる。SNSの時間を制限することが大切。

 幸せは長くは続かないように脳はできている。なぜなら、心地よい気分が長く続くと次の行動が遅れ、飢え死に繋がってしまう環境で長く先祖は暮らしてきたから。

 メンタルの不調から私たちを守ってくれる要素は「運動」「質の良い睡眠」「友人」の3つです。

 幸せを目標に頑張っても意味がありません。幸福感は長く続かない感情ですし、追うとしても逃げて隠れてしまうものです。努力を傾ける先はゴールではなく、そこまでの道のりですから、幸せのレシピは次のような感じになります。

1.一緒にいて快適で信用できる人達に囲まれる。

2.夢中になれて意味を感じられることをする。(他の人に対しても意味を感じられるようなこと)

3.1と2を繰り返す。

 

  いかがですか。私たちの脳は、こうゆう風にできていると思えば、悩みの半分は無くなりそうですね。

メンタル脳.png
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