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こころの健康に参考になる本の紹介 カウマンの本棚⑥
「メンタルマネジメント大全」
ジュリー・スミス著 野中香方子訳
河出書房新社(23.2.28発行 本体1820円)
本帯のとおり「メンタル版家庭の医学」です。350ページもあり、通読し
て役に立つというより、困ったときに、症状に該当するページを開き、理
解を深め、対応ツールを実行してみるのがよいと思います。また、相談さ
れる立場の方は、よきアドバイスをするために、有効と思われます。
具体的には、8章ありますが「気分が落ち込むとき。やる気が出ないと
き。つらい感情に捕らわれているとき。大切なものを失ったとき。自信を
なくしているとき。不安を感じているとき。ストレスを感じているとき。
心が満たされていないとき。」というように、具体的な症状について、そ
の原因や成り立ち、考え方が説明してあり、対応ツールもそれぞれ具体的
に取り上げられています。
全体的には、感情は扱い方次第だ、特効薬はないが、小さな行動の継続
で改善可能、マインドフルネスと自分で考え書き出すことが推奨されてい
ます。(各章にはもっと具体的に説明あります)
以下、気づきのあった文の紹介です。
・思考が事実ではないように感情も事実ではない。(p37)
・メタ認識は複雑に思えるかもしれないが、簡単に言えば、頭に浮かぶ思考に気づき、それをどのように感じられるかを観察することだ。(p48)
・落ち込んだ気分は私達が何もしないことを望む。だから小さくても何か前向きなことをすれば、望む方向に向かう健全な一歩になる。(P59)
・問題を解決する最も効果的な方法は、その問題を徹底的に理解することなのだ。(p112)
・私たちは感情を希望どうりに引き出すことはできないが、自分が思っている以上に感情に影響を与えることができる。(p117)
・感情は確かに存在するが、事実ではない。感情は推測であり、選択肢の一つだ。私たちの必要を満たし、生活を支えるために世界を意味づけようとする脳の試みなのだ。感情が真実ではないように、思考も事実ではない。認知行動療法などのセラピーが有効なのはそのためだ。(p118)
・感情を、区別する言葉が増えるほど、脳がさまざまな気持ちや感情を理解するための選択肢が増える。(p133)
・自分でコントロールできないことに対して怒りを覚えたら、体を動かそう。人間は本来そうやって生理的な興奮を利用するようにできている。(p151)
・恥から立ち直る方法は、学ぶことができる。それは自己成長の実践でもある。恥に対する回復力を高めることは、恥を感じないことではなく、転んでも埃りを払い落として再び立ち上がる方法を学ぶことなのだ。(p174)
・人間は、他者が自分をどう思っているかを気にするようにできている。したがって、気にしなくていいと自分に言い聞かせても問題は解決しない。(p178)
・ 不安を感じると呼吸はより浅く、より速くなる。体を落ち着かせるには、ゆっくりとした深い呼吸をしたり、体を動かすとよい。吸う息よりは吐く息をより長く、より強くする。(p222)
・思考パターンのバイアスに気づいたら、ラベル付けしてネガティブな思考から距離を取ろう。(p241)
・死を受け入れることは人生を諦めることではない。全く逆だ。死を受け入れる事で人生に意味を見出すことができる。逆に言えば、人生に意味を見出し、それに従って生きるようになれば、死を人生の一部として受け入れやすくなる。(p246)
・脳が私たちに何かをする為の準備をさせる時、私たちはストレスを感じる。(p250)
・ストレスを軽減するのは総じて良いことだ。しかし、それがうまくいくとは私には思えない。理由の一つはストレスの軽減という言葉は漠然としていて、実際にどうすればいいかわからないからだ。もう一つの理由は、ストレス要因の大半は軽減できないことにある。(p259)
・有意義な人生にはストレスがつきものだ。何に価値を置き、何を目指していてもそれを達成するにはストレス反応が必要とされる。(p261)
・恥の感情は辛く激しいが、一時的なものであることを認識しよう。隠そうとすると、恥はいつまでも消えない。人に明かすことで、失敗すると恥を感じるのは人間として当然であることがわかる。(p296)
・何かに向かって努力するとき、なぜそれに取り組むのかを明らかにし、人生における満足や幸福感は終着点に待っているのではなく、そこまでのプロセスにあることを理解しておくことは有益だ。将来、幸せになるのを期待するのではなく、自分にとって最も大切な価値観に従って生きることで、今、人生が有意義で目的のあるものになるとしたら、どうだろう?わたしたちは、依然として変化と達成を目指して懸命に努力しなければならないが、意味深い人生の訪れを待っているのではなく、すでにそれを手に入れているのだ。(p305)
・人生に何が起きて欲しいかではなく、人生に何が起きたとしても、自分がどのような人でありたいか、どのような貢献をしたいか、どのように人生に取り組みたいか、に着目しよう。(p316)
人生案内か生き方の本とも読めますね。